【コレット】
「星……とても綺麗ね……」

本当は星なんてまったく目に入っていなかった。

私のすぐ傍に寄り添う、オーランドの体温、
息遣い、そして私を見つめる眼差しばかりが
気になって、星を見るどころじゃなかった。

【コレット】
「あれはオリオン座ね。
星座は詳しくないんだけど、
あれは私でも知ってるわ」

【オーランド】
「……そうだな」

【コレット】
「真ん中にね、三つ星があるのよ。
なんて……オーランドも知ってるわよね?
あ、じゃあ、あの星は……」

まだ早口で話を続けようとした私の唇を、
太くて無骨な指が塞いだ。

【オーランド】
「星ばかり見てないで、俺の方も見てくれよ、
お嬢様」

その声に誘われるように横を向いたら、
私を見つめる愛しい眼差がそこにあった。

【オーランド】
「……まったく……おまえさんはどうしてそう、
綺麗な瞳をしてるんだ……? 汚い物なんて
まだ一度も映したことがない瞳だ……」

【コレット】
「……」

どうしよう……とってもドキドキしているわ。

この音がオーランドに聞こえてしまったらどうしよう。

星の瞬きの音よって言ったら、
信じてもらえるのかしら……?

【オーランド】
「おまえさんは誰かを羨んだり、
憎いと思ったことなんてないんだろうな……」

【コレット】
「……そんなこと、ないわ……。
今だって、オーランドの方が背が高い分、
星空の近くにいて羨ましいと思ってるもの……」

恥ずかしくて、照れ臭くて、そんなことを言ってみる。

するとオーランドは私の頬から手を離すと、
楽しそうに大きな口を開けて笑った。

【オーランド】
「……ははっ、なるほど、そうか。
じゃあ、こうしてやろう」

【コレット】
「え……きゃっ!」

オーランドはいとも簡単に、
お人形でも持ち上げるように
ひょいっと私を抱き上げた。

【コレット】
「えっ……あの……オーランド!?」

とても不安定な体勢を取らされているはずなのに、
恐怖感はまったくない。

それはオーランドの筋肉のついた逞しい肩と、
私をしっかりと支えてくれている太い腕のお陰だった。

【オーランド】
「どうだ、これで俺よりも
夜空に近くなっただろう?」

私以上にはしゃいで、得意げな声が聞こえてくる。

【コレット】
「え、ええ……」

【オーランド】
「はははっ! 俺にしてはいいアイデアだったな!
ほら、存分に星空を眺めろよ!」

どうしよう、ますます星どころじゃ
なくなっちゃったわ。

子供みたいに無邪気にはしゃぐオーランドが可愛くて、
その笑い声がくすぐったくて仕方ないの。

本当は星よりも、オーランドの顔を見ていたいわ。

それはきっと星よりも、
キラキラ輝いているはずだから……。